Celebrating The Music Of Weather Report
Jason Miles (2000)
- Birdland
- Elegant People
- Badia
- Young And Fine
- Cannon Ball
- Pursuit Of The Woman With The Fethered Hat
- Mysterious Traveller
- Harlequin
- Man In The Green Shirt
- Palladium
- Cucumber Slumber
ウェザー・リポートのトリビュートということだが、ソングリストからもわかるとおりジャコ在籍時代の曲が多いのが嬉しい。マイルス・デイヴィス、アニタ・ベイカー、マイケル・ジャクソンなど多岐にわたる作品に参加しているキーボード奏者であり、プロデュサーのジェイソン・マイルスのウェザー・リポートのトリビュート作。ヴィクターベイリー、オマー・ハキムらWR卒業生をはじめブレッカーズ、デイヴィッド・サンボーン、マーカス・ミラー、ジョー・ サンプル、スティーヴ・ガッド、ウィル・リーなど第一線で活躍中の25人アーティストによるオールスター・セッション。サウンド的にはスムース・ジャズの作りとなっており、オリジナルを聞き込んだ人には少し物足りなく感じるかも。オープニング・チューンの《バードランド》でTAKE6のヴォーカルをサンプリングしたアレンジは面白い。
Body Acoustic
Michiel Borstlap (2000)
- Mr. Gone
- Volcano For Hire
- Face On The Barroom Floor
- Centurion
- When It Was Now
- Pursuit Of The Woman With The Feathered Hat
- Coco
- Three Views Of A Secret
- Man In The Green Shirt
- Birdland
日本よりも海外で高く評価されているオランダ出身の新進ピアニスト、ミケル・ボルストラップのウェザー・リポート・トリビュート。タイトルはWR初期の名作『アイ・シング・ザ・ボディ・エレクトリック』からとっているものと思われるが、内容はジャコが在籍したWR後期までを取り上げ、アコースティック・アレンジの傑作。同じくオランダ出身のギタリスト、ジェシ・ヴァン・ルーラーの好演も光る。ライナーには同じヨーロッパ出身のジョー・ザヴィヌルからの賛辞も寄せられている。 作曲家としても高い評価をされているミケル・ボルストラップは1966年ハーグ生まれ。5歳からピアノに親しみ、弱冠20歳にしてオランダのコンテストで作曲賞を受賞。その後、1992年にベルギーで開催されたヨーロッパ・ジャズ・コンテストでベスト・ソロイスト、1996年には本アルバムと同名のバンド、ボディ・アコースティックを結成する。この年のアメリカで開催されるセロニアス・モンク・コンテストで最優秀作曲賞に選ばれ、その受賞曲《メモリー・オブ・エンチャントメント》は、1997年のハービー・ハンコック、ウェイン・ショーターのデュオ作品『1+1』で取り上げられた。自身の初演は『レジデンス』に収められている。
Vertical Vision
Chrstian McBride (2003)
- Circa 1990
- Technicolor Nightmare
- Tahitian Pearl
- The Wizard Of Montara
- The Ballad Of Little Girl Dancer
- Lejos De Usted
- Precious One
- Song For Maya
- Boogie Woogie Waltz
クリスチャン・マクブライドは、1972年ペンシルバニア州フィラデルフィア生まれ。父親、叔父もベーシストという環境に育ち、8歳からベースを演奏。中学の時からジャズを、高校でクラシックを学んだ後'89年にジュリアード音楽院に奨学生として入学。ほぼ同時にプロ活動を始めた。95年にはファーストアルバム『Gettin' to It』をリリース。ユニバーサルからワーナーへ移籍して第一弾となった本作は、《ブギ・ウギ・ワルツ》を除く全てがジェフ・キーザー(key)とマクブライドのオリジナルで構成され、前作『SCI-FI』のような豪華ゲストの参加もなく、自身のグループだけの渾身の一作と言えるだろう。ジャコつながりでは、ザヴィヌルの《ブギ・ウギ・ワルツ》が気になるところだが、エレクトリックべースを使用したのはこの一曲のみだが、全体的にウェザー・リポートへのリスペクト作品とも感じ取れるもので、エッジの利いた硬派な演奏となっている。
Live At Tonic
Christian McBride (2006)
Disc-1
- Technicolor Nightmare
- Say Something
- Clerow's Flipped
- Lejos De Usted
- Sonic Tonic
- Hibiscus
- Sitting On A Cloud
- Boogie Woogie Waltz
Disc-2
- See Jam, Hear Jam, Feel Jam
- Out Jam / Give It Up Or Turn It Loose
- Lower East Side / Rock Jam
- Hemisphere Jam
- Bitches Brew
- Out Jam / Via Mwandishi
- Mwandishi Outcome Jam
- The Comedown [LSD Jam]
- Bonus Jam 1 (bonus track)
Disc-3
- E Jam
- Ab Minor Jam
- D Shuffle Jam
- D Shuffle Jam [part 2]
- Bonus Jam 2 (bonus track)
クリスチャン・マクブライドの自己名義通算6枚目となるアルバムは、NYのライヴハウス、トニックで行なわれた自身のレギュラーバンドと、豪華ゲストの白熱のジャムセッションを収めた3枚組(2005年1月10日・11日録音)。
<Disc-1>はレギュラーバンドのセッションだが、注目してしまうのは、『8:30』で収録されていたブギウギ・ワルツ。前作『VERTICAL VISION』でも取り上げているが、ここでは14分にも及ぶ白熱の演奏。ラストのテーマ部分でのテンションの上がり方が半端ではない。他にも#6-HIBISCUSもウェザー・リポートを想起させる曲だが、<Disc-1>ではエレクトリックベースでの演奏はこの2曲のみ。他はアルコなどを織り交ぜたウッドでの演奏。オルガンが入ったり、4ビートもあるが、全体としてはコンテンポラリーな印象。
<Disk-2>はレギュラーバンドにC・ハンター(g)、J・モラン(p)、J・シェインマン(vln)を加えた演奏を収録、オープニングから熱いジャムが繰り広げられる。ギターが入ることでファンク色が濃くなって、オーディエンスの興奮が伝わってくる。マクブライドが大好きなJBの曲や、マイルスの曲も取り入れ、トラディショナルな部分は影を潜めたジャム形式の演奏が続く。エレクトリックベースは#3のみ(日本盤の場合は#9も、これがファンキーで意外に良い)。
<Disk-3>は、“ソウライブ”のE・クラズノー(g)、DJロジック(turntables)、スクラッチ(beatbox)、“レタス”のR・ロス(tp)らが参加したヒップな演奏を収録。#1はミディアムテンポで30分を超える長尺モノだが、まったく飽きさせることなくグルーヴしており、マクブライド自身のMCによるバンドイントロも加え、ノリも最高潮に達している。この曲は3枚を通しても一番のハイライトではないだろうか。エレクトリックベースが好きな人には超オススメ。
3枚を通しでエレクトリックベースの演奏は少ないけど、ジャズの枠を外して、思いっきり楽しめる。値段もフツーのCD一枚分の価格だからホントにお得なアルバムだと思います。“今の音”に触れたい方は必聴です。
Brown Street
Joe Zawinul (2006)
Disc-1
- Brown Street
- In A Silent Way
- Fast City
- Badia/Booge Woogie Waltz
- Black Maket
Disc-2
- March of the Lost Children
- A Remark You Made
- Night Passage
- Procession
- Carnavalito
ザヴィヌルが故郷のウィーンに作ったジャズクラブ、Joe Zawinul's Birdlandで収録されたライブ盤2枚組。ザヴィヌル(key)以下、WRメンバーだったヴィクター・ベイリー(b)、アレックス・アクーニャ(per)、後に結成されたザヴィヌル・シンジケートからは、ナサニエル・タウンスレー(ds)が参加。さらに15名からなるビッグバンドがバックを務めるという壮大なスケールで演奏されたWRトリビュート。 意外にもWRのオリジナル・アルバムのイメージを壊さず、当時のシンセによるオーケストレーションをビッグバンドで再現した格好だ。ジャコ在籍時によく演奏された《Fast City》、《A Remark You Made》、《Night Passage》など、ファンにはたまらない内容。《Fast City》の疾走感、個人的に好きな《Badia/Booge Woogie Waltz》は特筆すべきものとなっているし、さすがに生のブラスの音圧はスゴイ!大迫力で迫るザヴィヌル・ワールド。 ベース好きとしてはヴィクター・ベイリーの働きぶりにも着目したが、指も良く動くし、なかなかいいグルーヴ出してます。サックスパートについては、オリジナル・アルバムにおけるショーターの個性が強すぎて、ここで代役に対してどうこう言うのは酷かな。いずれにしてもリズム、アンサンブル、各人のソロ、全てを爆走させたザヴィヌル爺さん(1932年生まれ)のパワー爆発!
75th Last Birtday Live!
Joe Zawinul & The Zawinul Syndicate (2008)
Disc-1
- Introduction To Orient Express
- Orient Express
- Madagascar
- Scarlet Woman
- Zansa Ⅱ
- Cafe Andalusia
Disc-2
- Fast City / Two Lines
- Clario
- Badia / Boogie Woogie Waltz
- Happy Birthday
- In A Silent Way
- Hymn
amazon
TOWER 2007年9月11日、午前5時、故郷ウィーンでジョー・ザヴィヌルはこの世を去った。皮膚癌だったという。この年の夏、ザヴィヌル・シンジケート結成20年を記念したヨーロッパツアーを敢行し、7月7日、スイスで75歳の誕生日に行ったバースデイ・ライヴの模様と、その一ヵ月後の8月2日にハンガリーで行われたジャズ・フェスティバルで盟友ウェイン・ショーターとのセッション《イン・ア・サイレント・ウェイ》を収録した全12曲、2枚組CD。右は2009年に発売された収録内容が同じDVD作品。
スイスで行われたライブには、リンレイ・マルト(b)、パコ・セリー(ds)らザヴィヌル・シンジケートの面々と、『ナイト・パッセージ』、『ミステリアス・トラヴェラー』などのWR時代の曲、WR解散後の『ワールド・ツアー』、『フェイセス・アンド・プレイセス』などからの作品を織り交ぜたザヴィヌル・ワールドが展開している。病魔に冒されながらの演奏とは思えないパワフルなセッションだ。
前作『ブラウン・ストリート』はブラス・アンサンブルの強力なサポートが功を奏した近年では稀に見る傑作であったが、今作はヴォコーダーで処理されたヴォイスエフェクトを用いながらも、専任ヴォーカルを擁した7人だけのパフォーマンス。それでも非常に高いテンションを維持したライブとなっている原動力は、やはりリズム隊であろう。《ファスト・シティ~トゥー・ラインズ》のリンレイ・マルトのベースソロには舌を巻く。『ブラウン・ストリート』でも演奏されていた《バディア~ブギ・ウギ・ワルツ》は、ミステリアスなスキャットも加わり、曲の後半の盛り上がりはいつもながら素晴らしい。ここでもリズム隊の煽りが効いている。
曲の中でメンバーを紹介する声には、力強さが残っており、2ヵ月後に死を迎えることなど想像もつかないが、ライナーによれば、一ヵ月後の8月のザヴィヌルは車椅子でステージに向かわなければならかったという。そのような状態でウェイン・ショーターと14分を超えるパフォーマンスを行った。人生の最後に、苦楽をともにした盟友と、WR時代も何度も演奏したであろう《イン・ア・サイレントウェイ》をどんなことを考えて演奏していたのだろう(ザヴィヌルは遡る5月に癌の宣告を受けていたという)。
マイルスのように、いつも「次」を模索し、時代が後から追いついてくる。そんな音楽家ジョー・ザヴィヌルの最後を飾るに相応しい作品だ。ザヴィヌル、ありがとう。
Joe Zawinul Tribute
Pippo Matino (2009)
Disc-1
- Duet For Joe
- Young And Fine
- Db Waltz
- Just Mary
- Orient Express
- Can It Be Done
- So Alone
- Jazzy
- Traveler's Song
- Ballad For Joe
- Fast City
- Pepe
イタリアのジャコ・パストリアスと称されるピッポ・マティーノのジョー・ザビヌル・トリビュート作品。最終的にワールド・ミュージックに行きついたザヴィヌルをさらに発展させるべく挑んだ意欲作。 ウェザー・リポートの代表曲とマティーノ自身とバンド・メンバーのコンポジションをバランス良く配した。
基本的にシンセ、ベース、サックス、そしてドラムスの4人による演奏で極めてシンプル。とはいえ、エフェクトを加えたベースラインやシンセサイザーの音は「今」を感じさせるエッジの立ったサウンドとなっている。ベーシストのアルバムだけにベースソロがふんだんに盛り込まれているかと思ったが、意外にもワンマン・ベースショーといった場面はなく、キッチリとサポートに徹している。シンセはザヴィヌル風、サックスはショーター風と思しきプレイが飛び出すのはこの手のアルバムではお約束。オリジナリティ溢れるアレンジに仕上がっており、《ヤング・アンド・ファイン》、《ファスト・シティ》といった曲は、往年のサウンドから時空を超えたハイパー・ジャズになっていた。
マティーノは2007年のリーダー作『Essential Team
』でも《Night Passage》、《port of Entry》といった曲を録音しており、根っからのウェザー・ファンなのだろう。そんなことがうかがい知れる本作は、これから聴いてみようと思う人の期待を裏切らない内容となっている。
Fast City
A Tribute to Joe Zawinul
Vince Mendoza (2010)
- Jungle Book
- Orient Express
- The Juggler
- Nubian Sundance
- Dream Clock
- Fast City
- Peace
- Tower Of Silence
- In a Silent Way
2010年末にリリースされたは総勢で約60人のメトロポール・オーケストラを率いたヴィンス・メンドーサによるウェザー・リポート・トリビュート。2008年1月と6月のライブ音源である。ジョー・ザヴィヌルが亡くなってからの録音だが、本来はジョーがこのオーケストラと共演するプロジェクトだったという。ゲストに、ピーター・アースキン(ds)、ヴィクター・ベイリー(b)、アレックス・アクーナ(pre)ら元ウェザー・リポートの新旧メンバーが全面的にバックアップ。
ウェザー・ファンのツボを押さえた選曲だが、中でも#4《Nubian Sundance》が取り上げられているのは珍しいし、オーケストラとの共演でどんなアレンジになっているか興味をそそられる。
ジョーはクラシカル・ミュージック的な完璧主義を晩年のウェザー・リポートに持ち込み、シンセサイザーによるオーケストレーションを駆使することで、その志向性を貫いた。晩年の活動ではビッグバンドとの共演はあったものの、本作の規模を誇るオーケストラとの共演は実現することはなかった。もし、この録音までジョーが生きていたら…なんて思い浮かべるのも悪くはないのだが、ジョーの大役はジム・ベアードがの活躍で十分に補われている。
生のーケストラのサウンドの厚みは相当なものだが、ジャズ“らしさ”という点ではソフィスティケイトされ過ぎているとも言えなくない。このあたりはどう考えるかなのだが、演奏と選曲、そしてコアメンバーがウェザー所縁のメンバーということで、ファンには嬉しいアルバムといえよう。僕はやはりウェザーの定番、あアルバムのタイトルにもなった《Fast City》が入っているのが嬉しい。
HBC
Scott Henderson, Jeff Berlin, Dennis Chambers (2012)
- Actual Proof
- Misterious Traveller
- Footprints
- D Frat Waltz
- The Orphan
- Sightseeing
- Way Word Son Of Devil Boy
- Threedom
- Stratus
スコット・ヘンダーソン(g)、ジェフ・バーリン(el-b)、デニス・チェンバース(ds)の3人が結成した「HBC」のファーストアルバム。このメンバーで来日公演を行ったことがあるらしいが、スタジオ・レコーディングするのは今回が初めてという。
今回彼らが取り上げたのは、1970年代に発表されたハービー・ハンコック、ビリー・コブハムの曲と、ウェザー・リポートのアルバムに収録されていた楽曲を中心としているので、どんなアレンジになっているか気になり、買ってみた(この中でジャコがレコーディングに関わっていた原曲は『8:30』に収録されていた《The Orphan》と
《Sightseeing》だけだが…)。
腕利きの3人が集まっているから聴く前からなんとなくイメージできていたのだが、やはり基本的にはインタープレイが中心のハード・エッジなフュージョン。バラードらしきものはウェザーの《The Orphan》くらい(笑)。曲によってはスコット・ヘンダーソンの多重録音により鍵盤奏者が加わっているような錯覚を覚える。
面白いと思ったのは原曲にほぼ忠実な高速4ビートの《Sightseeing》から間髪入れずにルーズなブルース《Wayward Son of Devil Boy》までの流れ。《Sightseeing》はジェフ・バーリンが遊びでジャコをマネているようにも聞こえるし《Wayward…》のスコット・ヘンダーソンの歪み具合がメっチャ良い。インタルード的な《Threedom》はジェフ・バーリンのリリカルなベース・ソロ。アルバムのクロージングにはご存知コブハムの名曲《Stratus》。これがまたまたカッコ良いんだ!国内版はボーナストラックつき。