The Early Years 1968-1978
Jaco Pastorius(2003)
Disc-1
- Sermon At The Grossroads
- Please Don'T Love Me
- Jaco'S First Gig
- The Chicken
- Suzanne
- If You Were Mine
- Street Life
- Mr. Pitiful
- Higher Solo
- Ming Of Mibgs
- Rice Pudding
- Amelia
- Do You Like The Sound Of The Music
- Long, Long Day
- Exploring On Acoustic
- Dexterity
- The Birth Of Continuum
- Mr. Clean
- I Can Dig It Baby
- Touch The Sky
Disc-2
- Behind The Scenes
- Between Races
- Domingo
- Wiggle Waggle
- Opus Pocus
- Baloon Song
- Continuum
- Behind The Scenes Part-2
- All The Things You Are
- Bright Size Life
- Epic "Hitman" Contracts Jaco
- The Real Deal
- Refuge Of The Roads
- Hejira
- Jaco, John & Mary
- Cannonball
- Kuru/Speak Like A Child
- Las Olas Farewell
収録内容が権利関係などの問題でメジャーレーベルから販売を許可されなかった『ポートレート・オブ・ジャコパストリアス~ジ・アーリー・イヤーズ(以下POJ)』が構想から10年以上を経て2枚組みCDとしてリリースされた。POJにはCDの他にフロリダで活動していた1968年から78年までの10年間 でジャコがいかに音楽に開眼していったかを記すドキュメントと、未発表写真が多数掲載された74ページの豪華なカラー・ブックレットが付属。日本にはとりわけ熱心なジャコファンが多いためか、特別に「Japanese Version」が用意されている。これは、英語バージョンのブックレットを完訳した冊子が同梱されたものだ。POJの音源は、若き日のジャコとともに青春時代を過ごした親友であり、本作品のプロデューサーであるボブ・ボビングのプライベートテープだ。ジャコがマイアミで録音したオリジナルのデモ・テープや、プロとして行なった初めてのセッション、初めてのバンド、ソロイストとしてフィーチャーされた初めて演奏、初めて参加したアルバム・セッションなど貴重な記録が収録されている(Disc-1は1968~74年、Disc-2は1974~78年8の録音)。収録曲の間にはジャコが活動を共にしたジョニ・ミッチェル、パット・メセニー、ハービー・ハンコック、ジ ョー・ザヴィヌル他へのインタビューも挿入され、ドキュメンタリーのテイストの強いものとなった。購入は通販サイトCdbabyのみで行われていたが、2003年に日本のみで店頭販売されることになった2006年にはこのこのアルバム収録ナンバーに新音源を加え、さらにナレーションを抜いたバージョンとして『The Early Years Recordings 1969-1975』(下に掲載)がリリースされた。
The Early Years Recordings 1969-1975
Jaco Pastorius (2006)
- The Chicken
- I Just Wanna Make Love
- Higher
- Ming of Mings
- Rice Pudding
- Ameila
- Do You Like the Sound of the Music
- Between Races
- Domingo
- Wiggle Waggle
- Ballye de Nina
- Opus Pocus
- Continuum
- The Balloon Song
- All The Things You Are
『ポートレイト・オブ・ジャコ』(以下P.O.J.)は、このアルバムのプロデューサーボブ・ボビング所有のプライベート録音の音源と、ジャコと所縁のあるアーティストたちのインタビューを中心に、ジャコの音楽的な成長過程を追ったドキュメンタリー作品だったため、ファンの間ではナレーション抜きでじっくり曲を聴きたいという声が寄せられていた。その要望にこたえて制作されたのが本盤である(16ページの特製ブックレット付)。P.O.J.でカット&フェイド・アウトされていた曲をノーカットで完全収録。ジャコが18歳で初めて結成したトリオ“Woodchuck”、19歳で加入した地元バンド“Tommy Strand & Upper Hand”、20歳で加入した“Wayne Cochran & C.C. Riders”による演奏、パット・メセニーらとほぼ同じ時期にステージに立っていたマイアミのクラブ「バチェラーズIII」のハウスバンドの音源など、23歳までのスタジオ録音で構成されている。聴きどころは、3曲もの未発表曲#1、#2、#11が追加されたことである。とくに13分間にわたるオリジナル曲#11《Ballye De Nina》は、22歳のジャコが作曲した渾身の作品。長いベースソロも聞き物である。#12《Opus Pocus》はロングバージョンで収録。#13《Continuum》はウェザーリポートに加入する経緯で、ジャコがザヴィヌルに手渡したデモテープに入っていた音源そのものである。#15《All The Things You Are》はパット・メセニーのブライト・サイズ・ライフと同じメンバーによるライブ演奏。この演奏は中途半端な終わり方が悔やまれる。個人的には“Wayne Cochran & C.C. Riders”の演奏が無茶苦茶ソウルフルでカッコいいなぁ。
デジタルマスタリングでよみがえった若き日の演奏から音楽面のルーツを辿る作業も、ファンにはまた楽しいものである。この未発表音源シリーズは、世界一のジャコ研究家であり、アドリブ誌の編集長である松下佳男氏のライフワークとしてこの先も続く。2007年12月にはフィギア付きCDとしてリイシューされた。
Legendary Demo & Live Tracks
Jaco Pastorius (2008)
- Havona
- Kuru
- Continuum
- Tell Daddy
- Soul Intro / The Chicken
- Portrait of Tracy
- Mr. Fone Bone
- Opus Pocus
- The Chicken
- Balloon Song
- Liberty City
アーリー・イヤーズ・シリーズもついに第三弾の登場となった。収録内容の一部は既発のブートレグに収録されたものだが、#1, #2, #4, # 6, #9の計5曲はこのアルバムで初めて収録されたものだ。
#1《Havona》デモトラックでも独特のフレージングを伴った力強いベースラインは健在。アレックス・ダーキィの(key)、ボビー・エコノモウ(ds)、そしてジャコのベースというシンプルな編成のため、ベースが自然と際立つ。これは1974年の音源だがジャコのプレイは『Heavy Weather』に収録されたバージョンと比べても引けをとらない。ジャコのベースは既に孤高の領域に達しつつあった。
#2《Kuru》は、#1の奏者3人にドン・アライアスが加わったもの。ジャコのバッキングは『ジャコ・パストリアスの肖像』のバージョンとほぼ変わらぬ疾走を聞かせている。延々とリフレインされるベース・ランニングの心地よさの上に、アライアスの熱いリズムが絶妙に絡む。
#4《Tell Daddy》は、Woodchuckによる演奏。ジャコがビリー・バーグ(B3-hamond org)、ボブ・ハーツォグ(ds)と結成したオルガン・トリオ。これまでリリースされた『The Early Years Recordings 1969-1975』の中ではヴォーカル・ナンバーは収録されていなかったが、今回の収録でハーツォグが荒削りながらもクラプトンばり(?)の熱い歌声を聞かせている。「R&Bはお手のもの」的なジャコのノリの良いのバッキングが聴きどころ。
#6《Portrait of Tracy》は、1976年にベルリンで行われた「ベルリン・ジャズ・デイズ」からのソロ演奏音源。いつもながらとてもシンプルな演奏だが、破天荒な80年代に比べ、とても大切に演奏しているように感じてしまうのは、思い過ごしか。このイベントでジャコは、アルバート・マンゲルスドルフ(tb)、アルフォンス・ムザーン(ds)とインプロヴィゼーションを繰り広げた。その模様は『Trilogue』に収録されている。
#9《The Chicken》は、#4と同じWoodchuckによる1970年の演奏。オルガン・トリオということで、ビッグ・バンドによる#5と比べて生々しく、とてもソウルフル。ジャコはバッキングに徹する。2006年に発売された『The Early Years Recordings 1969-1975』に別のバージョンが収録されており、聴き比べるのもおもしろい。
毎年、小出しに出されるこのシリーズだが、これからも掘り出し物が楽しみである。
Woodchuck
Jaco Pastorius (2008)
- Think
- Something You Got
- Ninety-Nine And A Half (Won't Do)
- You Don't Miss Your Water
- Tell Daddy
- Barefootin'
- Fannie Mae
2008年12月リリースのアーリー・イヤーズ・シリーズ第四弾は、ジャコが18歳のときに結成されたオルガン・トリオ「Woodchuck」のR&Bカヴァー集。アレサ・フランクリン、ウィルソン・ピケットなどのソウル・スターの名曲をカヴァーしている。この「Woodchuck」は、私たちが知っているジャコの初期のバンド活動を記録した貴重な音源である。
メンバーはジャコの他、『肖像』収録の《カム・オン・カム・オーヴァー》を共作したボブ・ハーツォグ(ds, vo)、当時フロリダでも有名なハモンドオルガン奏者だったビリー・バーク。
今回の音源も『Legendary Demo & Live Tracks』と同様にボビングが所蔵しているライブとデモトラックの2つの音源(#1-5, #6,7)をまとめたものである。プライベート音源ではあるが音質は想像以上に良い。
ハーツォグのヴォーカルを主体としたR&Bなだけに、ジャコはバッキングに徹しており、我々が知っているジャコを感じ取るのは少し難しいかもしれないが、彼ら3人が当時目指したものがブラック・ミュージックの魂を揺さぶるグルーヴだったことは非常に興味深い。詳しくは当サイトの特集記事を参照していただきたい。
我々の馴染みの曲としては#7の《ファニー・メイ》の収録が嬉しい。#5《テル・ダディ》は前作『Legendary Demo & Live Tracks』と別バージョン。次々とリリースされる貴重な音源、さらなる続編が期待される。
Tommy Strand & The Upper Hand featuring Jaco Pastorius

Jaco Pastorius (2009)
- I Just Wanna Make Love To You
- Go Down Gamblin'
- Only The Beginning
- Higher
- More & More
- Proud Mary
- Too Hard To Handle
- Funky Break Song
- Watermelon Man
- The Chicken
アーリー・イヤーズ・レコーディング・シリーズ第5段『トミー・ストランド&ジ・アッパー・ハンド・フィーチャリング・ジャコ・パストリアス』はジャコが19~20歳の間活動していた白人ソウル・バンドである。そのレパートリーはブラッド・スェット・アンド・ティアーズ(BS&T)、シカゴ、スライ・アンド・ファミリー・ストーン(S&FS)などのカヴァーだった。
オープニング・トラックの《アイ・ジャスト・ワナ・メイク・ラブ・トゥ・ユー 》は当初収録されたものとは別バージョンが予定されていたが、プロデューサー、ボブ・ボビングがアルバム全体の曲のトーンに配慮して『ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディングス』に収録されていたバージョンと同一のものに。《ゴー・ダウン・ギャンブリン》は間奏が始まってすぐのジャコのベースに思わず仰け反ってしまう。《オンリー・ザ・ビギニング》も同様にギターのイントロ&カッティングが印象的なナンバー。
本作のハイライトである《ハイアー》は『ジ・アーリー・イヤーズ・レコーディングス』ではフェードアウトで終了していたが、今回は12分超のノーカット・ロング・バージョンとなって再録されている。ジャコはブルース・ハープ・ソロでお得意のリズム・パターンを黙々と弾き、その後は5分間にも及ぶマッチョなベース・ソロへ突入。終盤まで脅威のスタミナで弾きまくる。
前曲のノリを引き継ぐ形で《モア・アンド・モア》に突入。間奏部分に短いベース・ソロが入るが、このランニングが実にカッコいい。《トゥー・ハード・トゥハンドル》は間奏の途中で《サンキュー》になってしまうのが楽しい。《ファンキー・ブレイク・ソング》は当時、ライブのエンディングに用意されていた曲と思われる。
ボーナス・トラックは《ザ・チキン》と《ウォーターメロンマン》。
今回のアルバムはジャズ・ファンだけでなく、ファンク、ロック、そしてもちろんR&Bが好きな方にも喜んでもらえるはずだ。
The Green Light
Jaco Pastorius (2011)
- Ballye De Nina 13:09
- Lonely Dreams 9:11
- Las Olas 9:50
- Call it Sunshine, I'm a Rainbow, Dance with Her Father 8:28
ジャコ生誕60年記念のリリース。1973年にフロリダのマイアミビーチにあるプレーボーイ・プラザ・ホテルのロビーにあったバーで、マルチ・リード奏者、アイラ・サリヴァンのバンドが行ったギグのライブ音源。ジャコはトミー・ストランド&ジアッパー・ハンド、ウェイン・コクラン&C.C.アイダースの活動を経て、初めて本格的なジャズ演奏を学ぶ機会となったのがアイラ・サリヴァンのバンドだった。この作品にはもう一人注目すべきプレイヤーがいる。パット・メセニーがバークリー音楽学校の生徒だった時にギターの指導者だったジョー・ディオリオである。このほかのメンバーは『ジャコ・パストリアスの肖像』で《コンティーニューム》でエレピを担当したアレックス・ダーキ、ドラムスはジョー・ディオリオとの共演歴があるスティーヴ・バグビーが参加している。
オープニング・トラックはボッサを基調にした高速チューン《Ballye De Nina》実はこの曲、『The Early Years Recordings』に収録されていたものと同テイクである。というか、このアルバムがこの曲が録られたときのライブを収録したものだ。#2.《Lonly Dreams》はヴィヴラフォン奏者、テリー・ギブスのバラードナンバー。アイラのソプラノ・サックスとアレックス・ダーキィのエレピが幻想的な演出。ジャコは音数は少ないながらもハーモニクスを交えての好サポート。ややスピリチュアルな印象の曲。
#3.《Las Olas》はフローラ・プリムの『Every Day, Every night』に収録されたアレンジとは大違いの高速のフル・インスト・バージョン。アレックス・ダーキのエレピ・ソロの後、一分強の短めのベース・ソロがある(もっと聴きたかった)。それにつけても、この曲が1973年にすでにできていたとは…。#4はギタリスト、ジョー・ディオリオの《Call it Sunshine, I'm a Rainbow, Dance with Her Father》。覚えやすいテーマのリフが繰り返される中で、独特の揺らぎが最高に気持ち良い。ジャコのスイングもなかなか。途中のバンド・イントロでジャコは「ジョン・フランシス・パストリアス」と紹介されており、まだ「JACO」ではなかった(笑)。
収録時間は約40分、今どきのCD商品としてはやや短いように思うが、ジャコの未発表音源がこれだけのボリュームで聴くことができるのは嬉しい。
アルバムタイトルのGreen Lightは、文字通り青信号という意味。物事を前進させるサインであるとともに、行動を起こすという意味もある。『グリーン・ライト』はジャコがジャズ・ベーシストとしての第一歩を踏み出した記録である。